夏に食べると
元気になるのは

 梅雨が明けると、本格的な夏がやってきます。夏の訪れを教えてくれるのは、風や花などではなく、なんと自分の皮膚。じっとりと汗をかいて、その汗で自分自身がかゆくなるときがあります。その日がつまり夏の始まり。ロマンチックからはほど遠い、季節のお便りです。

 食べることに熱心な私は基本テキには夏の食欲不振には縁が薄いのですが、この時期だけ食べたくなるものがあります。
 それは、「ピリから」。ぐったり気味のときでも、少々スパイシーなものを口に入れるとなんだか元気になったような気になります。
 そこで、今日は日本の伝統的なピリからスナック、「柿の種」について少しだけ話したいと思います。

 柿の種は「おかき」ですので、主要なメーカーはだいたいお米の産地です。中が空洞でカリカリ香ばしい。柿と言っても「渋柿』の種の形。この形のおかきができたのは偶然の産物と言うことですが、確かになかなか思いつかない形です。
 干し柿を食べたことのない現代っ子の中には「おかきの柿の種」と、まるっこい「果物の柿の種」と形が違うことに疑問を持つ子もいるでしょうね。彼らが少し大きくなって「柿の種の形=干し柿の種」ということに気づくときが楽しみです。

 さて、話はそれましたが、この柿の種の、陰の主役は何と言っても「ピーナツ」なのです。 ピーナツとおかきの比。これが口の中のハーモニーを左右する最も重要な要素となることは間違いないと思われます。
 長年の独自の調査(独断と偏見とも言います)によりますと、ピーナツと柿の種の割合は結構厳密です。ピーナツが半分に割れている場合、おかきは2個。 ピーナツが丸のままの形の場合は、おかきは3個がベストな配合です。ピーナツの配分も、各社紆余曲折あったようですが、スーパに並ぶ主要2社である亀田と三幸の二つを比べると、圧倒的に三幸のピーナツの量がおおい。亀田でこの配分を試してみると、あっという間にピーナツがなくなってしまいます。また、亀田は「べたべた成分」が多く、湿気があるとすぐにくっついてしまうのに対し、三幸は「私は、元はと言えばおかきです。」という性格を前面に出しているので、ピリからべたべた成分も亀田よりは薄く、そのためおかきとしてピーナツとのマッチングはなかなか優れたものがあります。マイナーメーカーの三幸は「マツケン」の顏をたよりに探してみてください。
 そんなこんな言っても、やはり一番の王道は「浪花屋」の柿の種。新潟土産の定番、缶入りの柿の種ですが、最近ではネットでも百貨店でも手に入るようになりました。

 20年以上前、新潟へのスキーの帰りに衝撃的な柿の種を発見しました。それが浪花屋の柿種チョコです。今でこそ普通に店頭に並ぶ商品ですが、当時それを見つけたときの驚きは忘れられません。おそるおそる・・・口に運び、ぽりぽりとほおばってみると・・・、ご存知の通り予想を超えた美味しさでした。それ以来、新潟への帰りには必ず浪花屋の柿の種チョコを購入して帰っていました。その味は、現在様々なメーカーから種類の「柿の種チョコ」が発売されていることからみても、世の人々にしっかりと受け入れられているものと思われます。もちろんこれは、ピーナツは入っていません。

 そしてもう一つの変わり種は、三幸の「柿の種、梅ざらめ」。こちらはほとんどピリから成分なしですが、小分け包装の意味をなさないエンドレスな危険な柿の種です。我こそはというかたは、是非お昼に召し上がってください。さすがにおかきの食べ過ぎは胃にもたれます。そしてこれは、何かの間違いかと言うほどピーナツに合わない味付けになっています。(笑)
 柿の種は、ビールにも日本酒にも合う不思議なお菓子です。私は主に寝る前には日本酒が多いのですが・・・・。
 日本酒とは不思議な飲み物。他のアルコールより格段早く「もういいや、なにもかも」というラインが早くやってきます。ですから、歯磨きをした後であっても、ダイエット中であっても、胃が少々もたれ気味のときであっても、この液体を少しでも口にしてしまったら最後、柿の種の袋をあける確率はグンと高くなります。
 夏はビールが定番ですが、氷を一つ落とした日本酒で、柿の種試してみてくださいね。   
きっと何もかも忘れて楽しい夜となることでしょう。

 東京女子大学日本文学科卒業、夜中のお菓子研究家